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中学受験をお考えの方へ
大手進学塾に通わせれば安心という訳ではありません
中学受験塾にもさまざまなタイプの塾がありますが、入塾してみないと実態がわからないのが実際のところです。
中学受験のイメージは、入塾してから猛烈な勢いで勉強して成績を上げていく感じが主だと思いますが、そういう波に乗って成長していく生徒がいる一方で、ついていけなくなる生徒がいます。
そこで後者のような、本来であればしっかりした指導が必要な生徒が放ったらかしになっていることがよくあるのはご存じでしょうか?

集団指導をメインとする塾は構造上、生徒の様子にしっかり目を配ることが難しくなります。
生徒数の多い大手塾はなおさらそうなりがちなのです。


授業についていけずに置いてきぼりにされてしまい、勉強にどう取り組んでいけばよいかわからなくなったり、やる気が出なくなったり、更には勉強が嫌いになったり…
そうなってしまった生徒がよく私の塾へ移ってきます。
私はかわいそうと思うと共に、自塾の生徒たちにはそんな風になってもらいたくないと思っています。
今回のテーマは「無理をしない中学受験」です。
中学受験は塾での指導も大切ですが、家庭の受験に対するスタンスも重要なんです。
日頃、子供が一番密接に関わるのが保護者ですから。
保護者がどういう関わり方をするかで子供のメンタルは大きく左右されます。
親と子の受験
中学受験というのは子供の意思で行うというよりは、親主導で進めていくものです。
子供の人生の早い時期から将来を見据えて準備をしておくことは、子供の人生にとって大きなプラスになるでしょう。
私の塾の卒業生たちも充実した学生生活を過ごし、立派に社会へ出ています。
また、私自身中学受験をしましたが、同級生は国公立大学の医学部医学科に合格するような優秀な生徒が多かったです。
そのような小さな頃から勉強をしてきた子ばかりが通う中学・高校はクラスは、勉強をするのに最も適した場所になっています。
自分と似たり寄ったりの環境で生活してきた生徒が集まるので、集中して勉強をする雰囲気が出来上がっているのです。
中学受験は成功すると人生で大きくリードすることができますが、失敗することがあることも頭に入れておかねばなりません。
失敗とは、何も不合格だけに限りません。
長い目で見て、人生のためにならなければそれは成功だとは言えないのです。
以下に、中学受験の成功例と失敗例を挙げていきます。
成功パターンと失敗パターン
成功パターン
人は環境の影響を受けやすいものです。
ですから勉強を頑張る集団の中にいれば、自分も自ずと勉強しだすものです。
最初はそんなにやる気がなくても、周りの生徒を見ているうちにやる気が出てくるのです。
これが良いように作用すれば中学受験は成功します。
最初は中学受験が何なのかわかっていなくても、途中から目標ができたりして頑張り始めます。
もちろん、親や塾が私立の魅力を伝えたり、実際に学校見学に連れていったりして子供をその気にさせることも必要です。
一度学習習慣が身に付けば、後々まで役に立つので大学受験まで有利に進められます。
その流れにのっとって中学校に合格したらそれは中学受験に成功したと言えるでしょう。
しかし中学受験のメリットは、勉強のレベルが高い(大学合格実績がよい)学校に入れるというのも確かですが、それはメリットの中のほんの一部です。
私は目的があってこその中学受験だと考えているので、何となく良い学校に!という漠然としたスタンスでは中学受験のメリットを受けられないと思っています。
また、子供が自分で進路を決定することは難しいですが、少なくとも本人が納得して勉強をしないと逆効果になることさえあります。
中学受験における失敗とは、「不合格」ではなく、合格不合格に関わらず中学以降の人生をまっすぐ歩めなくなることだと思います。
失敗の原因は塾の場合もあれば家庭の場合もあります。
失敗パターン:塾が原因の場合
大手進学塾の罠
人はレベルの高い集団に属していれば自分もそれに合わせて努力ができる(朱に交われば赤くなる)もので、大手塾ではこの原理をふんだんに利用しています。
生徒をとにかくたくさん集め、彼ら自身に競争をさせ、その競争意識から成績を上げさせるのです。
学習塾も商売、どこの学校に何名合格させたかが重要です。
とにかく生徒をあちこちからかき集め、よく出来る上位層を手厚く保護して合格させるのです。
しかし、それ以外の生徒はどうなってしまうのでしょうか?
そう、指導がおざなりになるということが起こってくるのですよ。
志望校への対策は、難関校に対しては〇〇校特訓、などといったクラスが編成されますが、それ以外の学校に対しては一緒くたにされ、細かい指導はなされません。
何となく選んだ塾に所属することになるので、対策指導を受けている生徒と比べると色々自力で頑張らなければならなくなります。
ですから難関校を目指すのでなければ別に有名大手塾でなければならない、ということはないんですよね。
よく探すと小規模塾で面倒見のよいところはたくさんありますから、探してみてください。
そして悲惨なのが、上位層から落ちこぼれる生徒です。
もはや第一志望が遠くなってしまった彼らは特別クラスから転落してしまいます。
本来ならばここで視点を切り替えて、他によい学校を探すことが得策なのですが、偏差値第一の大手塾にいるとそれはネガティブな行動に感じられてしまうのでしょう、生徒はそこで自信を失ってしまうようです。
自信を失った生徒は、勉強に対して後ろ向きになり、その嫌な経験をずっと引きずるようになっていきます。
また上位層の中でもトップ集団はさておき、二番手、三番手の集団は大変です。
学力に見合った勉強量を超えて、トップ集団と同じハードな内容をこなすのですから。
また、トップ集団に居る生徒も成績が下降する恐れがありますので気が抜けません。
そう、子供なのに全力で他の子供と競争させられているのです。
自分のペースで勉強することからはかけ離れています。
実は、開成中や灘中などトップの私立中学に合格できるような子供はどこの塾に居ても優れた実績を出せますから、塾に対して「彼らのような生徒を育ててくれるのか」と見るのは誤りなんです。
しかし、塾側は彼らを広告塔にして生徒を募集します。
偏差値志向の学習塾では一部の難関校にのみ合格する価値がありますから、それ以外の学校に向けた指導はきちんとしてくれません。
そのような価値観の塾に通った子供はどう思うでしょうか。
それなりの努力をして志望校に合格しても何か、自分が主役にはなれなかったような寂しさが残るのではないでしょうか。
挫折をした生徒は自信を失ってしまうでしょう。
現在の私立中学を見ますとどの学校も非常に教育熱心で、各校特色豊かです。
今や学校側がそのように努力しないと、口コミで評判で志願者が来ないという事情があるからです。
もう大学への合格実績だけで中学校を選ぶ時代ではないと私は感じます。
仮に難関大学に合格しても、将来が安泰である保証は何一つ無い時代ですので、本当に子供に合った学校を選んでほしいと思います。
そういった意味で、学校見学なども積極的に行ったりしてよく家庭で考えてもらい、進路についてはあまり塾側に全て任せてしまわないほうがよいです。
失敗パターン:家庭が原因の場合
繰り返し言いますが、中学校に合格イコール成功、ではありません。
私の話になりますが、私は質の良い塾に通って中学受験をし、合格しました。
しかし、親が中学受験をさせようとした背景が良くなかったので、中学校には合格しましたがその後の勉強が続かなくなりました。

子供が勉強を放棄したり、親に反抗しだしたりするのは子供本人に問題があるのでしょうか?
私はそうではないと考えます。
家庭内の雰囲気や勉強への誘導の仕方が悪いと、子供は敏感に親の考えを察知して、親の望む方向から外れていってしまいます。

長時間の勉強を無理強いする
ありがちなのは、子供の気持ちを無視し、理不尽に長時間の勉強させるようなパターンです。
勉強マシーンのようにさせられた子供は心身ともに疲れがたまり、健全な生活が送れなくなります。
子供は自分で生活の仕方をコントロールできないので、親が見てあげないといけません。
しかし志望校合格に焦る余りに、子供の気持ちを無視した生活を強いてしまうのです。
気持ちはわかりますが、少し立ち止まって、そのまま親の意向を通したら子供がどうなるかを考えてみてほしいと思います。
勉強以外のことに目を向けさせない
勉強以外のことに関心を持たないまま思春期を過ごすことも考えものです。
時々、しつけに厳しすぎる保護者がいらっしゃいます。
とにかく遊びに関することを制限し過ぎてしまうのは逆効果です。
親としては余計なものに触れさせたくないのだとしても、子供にとっては成長の機会を奪われたことになりかねません。
子供は遊びを通して色々なことを学ぶのです。
子供のうちは勉強だけでいいと親が思っていても、子供が大人になったときには勉強しか知らない故に自分の世界を広げることができず、苦しむことになりかねません。
やはりある程度は子供のうちから色々経験させておいたほうがいいでしょう。
親の理想を押し付ける
それから、子供は親の思う通りには育ちません。
前もって子供の人生設計をしていても、それに沿った動きを子供はしてくれないものです。
偏差値の高い中学に通わせて、東京大学に合格させて将来は弁護士に…などと決めてしまうのはやめたほうが賢明です。
高すぎる目標を定めてしまえば子供の負担は想像以上のものになりますし、親のストレスも大きくなります。
親の役割はあくまでも子供に可能性を提示する、程度がちょうど良いです。
もちろん、中学受験を頑張ることや目標を持つことについてある程度働きかけることも必要ではあります。
子供は親の考えにとても敏感です。
親が独善的な考えで子供に頑張らせていたら、子供はそれをすぐに感じて不満を抱きます。
意外と多いのが子供を頭ごなしに否定する親です。
これは優秀な親御さんの場合に多いのですが、自分ができたことを子供ができないのが理解できないのです。
子供を理解しようとせずに自分の考えだけを押し付けていては、子供は前向きに頑張れません。
子供が受けたストレスは蓄積し、思春期に爆発する原因になります。
言葉を選ばずに言いますが、独りよがりな親ほど子供の気持ちを無視して無理やり勉強させます。
その場合子供は何も表には出しませんが、心の中はイライラしています。
本来子供は自由奔放なものですので、子供の心の声にも耳を傾けてあげましょう。
理想的な中学受験
最終的にはどの学校に行くか、より、どんな将来を迎えるかが大切です。
将来したいこと、それを実現するために、勉強はそれ自体を目的とするのではなく、何かを成し遂げるための手段と考えるほうがよいでしょう。
偏差値の高い学校に行っても、それが人生のピークだったという人も数多く居ます。
そうならないように順調な人生を送っていけるようなプランを練っていきたいものです。

無理をしてギリギリの成績で入学した中学校で、周りが優秀なため、いくら努力してもついていけなかったということはよくあります。
一方で自分に合ったレベルの中学校に入学して上位をキープし、難関大学に合格したという話もよくあります。
そういうことを考えると、子供に合った中学受験の仕方を模索することが一番大切なことではないかと私は思うのです。
