ホーム 『モルテン食いたりないよね^q^』田辺青蛙 第13回 ぶらりフィレンツェ Page 1



第13回:ぶらりフィレンツェ


フィレンツェは町中が観光スポットだらけで、歩いているだけで特に地図なんて持っていなくっても満足出来る風景に必ず巡り合うことが出来た。

小さな美術館でもあっと驚くような名画や、豪華なメディチ家の装飾具があったし、皆とても親切で、1つ1つの作品の謂れや経歴についてゆっくりとした英語で教えてくれた。

ヴィーナス誕生等の名画の鑑賞が出来ることで知られる、ウッフィーツィ美術館だけはいつも長蛇の列でふらりと寄って見るということが出来なかったがそれ以外は、人ゴミとは無縁で、フラ・アンジェリコの美しい受胎告知をじっと見て凄いと呟き続けていた時は私達夫婦二人くらいしか居なかったし、ベアート・アンジェリコの絵画もゆっくりと観ることが出来た。

周りの観光客は絵画より、修道士の部屋を興味深く見ているようだった。

たっぷりと美術館巡りをした後に、流石に疲れたので一度ホテルに戻ることにした。


ドゥオーモ(大聖堂)は茜色に染まり、あちこちからトマトや肉を煮込む匂いがする。どこも夕暮れ時の時間に感じる哀愁みたいなものは共通するんだなと思いながら石畳の上を歩いていると、ドゥオーモの近くで、チアガールのような恰好をした少女達の姿が目に留まった。

金髪のポニーテールをピンク色のシュシュで結び、皆ちょっと恥ずかしそうな笑顔で「Free! HUG!」と書かれたスケッチブックを手に佇んでいた。

年齢は高校生くらいで、あまり化粧っけはなくどういう目的でいるのかは分からなかったけれど、同じ年頃の男の子たちが小突きあいながら少女のところに行くかどうか相談しあっているようだった。

しばらく暇だったので、眺めていた結果、少年達は少女達の側には寄らず、観光客と思わしき年配の女性数名が抱きつき、どうしてこういうことをしているのかと聞くと、子供の虐待防止活動を訴える活動としてやっているということだった。

若い小鹿のような少女達が恥ずかしそうに立っている姿を見て、私も一言何か声をかけようかと随分迷ったのだけれど、結局何も言えなかった。


そうこうするうちに、すっかり日は落ちて、辺りは夕闇に包まれ始めた。

薔薇の花売りがテラスで食事をするカップルに一輪いかがと話しかけている。

メディチ家の紋章が街のあちこちで存在感を示していました
メディチ家の紋章が街のあちこちで存在感を示していました


私達も食事に行こうかという話になり、オレンジ色の街灯に照らされる街並みを眺めながら歩くうちに、肉を焼くとても香ばしい匂いのする店が目にとまったので中に入ってみることにした。

メニューはイタリア語で読めなかったので、とりあえず近くで食事をしている人のお皿を見て、あれと同じ物を欲しいと伝えると、あれはフィレンツェの名物料理のビステッカだよと笑って教えてくれた。

オーダーを済まし、赤ワインをちびちびと飲みながら、15分ばかり待つとじゅうじゅうと湯気を立てた大きな肉の塊が運ばれてきた。

最初見た時はこの量はとても一人じゃ食べきれないと思ったのだけれど、お腹が空いていたせいか、それともフィレンツェの空気の持つ魔力なのかあっという間に食べてしまい、少々物足りなかったので、追加で生ハムメロンやスパゲティまで頼んでしまった。

ビステッカどどーん!
ビステッカどどーん!

生ハムメロン
生ハムメロン

更に食べます
更に食べます

そこまで食べると、ちょっと苦しくなってきたので、お勘定を済まし、店の人にとても美味しかったと伝えてから少し歩くことにした。

このままホテルに帰っても、食べ過ぎで苦しく、とても眠ることは出来そうになかったからだ。

特に目的もなく歩いていると、シニョリーア広場に着いてしまった。

ヴェッキオ宮やバルトロメオ・アンマナーティ作「ネプチューンの噴水」の前で多くの観光客が賑やかに過ごしている。

その中に光るプロペラの玩具を売っている人たちがおり、飛ぶように売れていた。年配の人も若い人も、子供も皆、楽しそうに人ゴミの中、青や赤に光る電球の付いたプロペラを飛ばして遊んでいた。

当然、人が多く危ないので何度かプロペラが当たりそうになったり、頭の上にコツンと落ちて来たりすることもあった。

だけど誰もそのことを気にしている節はなく、何だか夏祭りの夜みたいな高揚感に辺りは包まれていた。

人の波にもまれるうちに、少し離れた場所で夫が手招きしていたのに気づき側に行くと、地面の丸い円を指さしてここがサヴォナローラが殺された場所だよと教えてくれた。

火刑を示す場所
火刑を示す場所

花の都、フィレンツェの芸術が大きく花開いたルネサンスの終焉を招いた男、サヴォナローラは「虚栄の焼却」と言って、名画や書籍をこの広場で山のように積み上げて民衆と共に焼き払った。

そして最終的には彼自身も、広場で焼かれてしまい遺骨は川に流されてしまったという。

ダ・ヴィンチ等の巨匠が作成した物も彼の影響でここで焼かれてしまったという話も残っていると聞いたことがある。

賑やかな観光客が溢れる地のここで、火によって色んな物が失われてしまったのだなと思いながら、床の円の写真を撮った。

人に酔ってしまったせいか、少々疲れたので近くで休める場所を探そうと思ったところで「Gucci Museo」の看板が目に入った。そういえばあそこに軽食も取れるスペースがあると聞いていたことを思い出し、中に入った。

グッチカフェ&博物館
グッチカフェ&博物館

夜は人でいっぱいだったけれど、日中は比較的静かな広場
夜は人でいっぱいだったけれど、日中は比較的静かな広場

広場のすぐ横という立地にも関わらず、客は私達以外誰もおらず静かで、試しに頼んだワインもとても美味しかった。あれだけ食べたというのに、小腹が空いて来たのでチーズの盛り合わせを頼んだ。

辛口のイタリア赤ワイン
辛口のイタリア赤ワイン

グッチカフェにて
グッチカフェにて

ほどほどに酔っ払いながら、とりとめもない話を交わし、時間がゆっくりと過ぎていく。

外ではまだ光るプロペラで遊んでいる人たちが大勢いて、人の集まりの中で、何人か『ジョジョの奇妙な冒険』のキャラのT-シャツを着ている人や、コスプレをしている人も見かけた。日本人のように見える人もいれば、現地の人っぽい人もいた。

フィレンツェの観光が終わると、次はローマへの移動となる。

この町の最後の観光の日は、荒木飛呂彦先生から勧められた博物館と、再度原画展に行くことに決めていた。

博物館ではエロい解剖美女がいると聞いていたけれど、それはどんな姿をしているんだろうか。

半分酔っ払いの頭では上手くイメージすることが出来そうにもなかった。

フィレンツェ滞在中に毎日のように通って食べたスイカのジェラート。種が入っていました
フィレンツェ滞在中に毎日のように通って食べたスイカのジェラート。種が入っていました

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「モルテン食いたりないよね^q^」田辺青蛙
第13回 ぶらりフィレンツェ

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