ホーム 『日本全国もっと津々うりゃうりゃ』宮田珠己 第1回 長崎──1. 出島とヒマ Page 4

居留地時代に似せて復元された建物があり、そのなかでビリヤードの原型となった台や、ウンスンカルタなどの展示を見る。

ウンスンカルタは、オランダから持ち込まれたカードゲームが日本に来て変化したもので、いかにもエキゾチックな絵柄が魅力だが、その絵柄がものすごく下手くそで愉快である。

下手は下手なりに妙味があるというような素朴な下手さではなく、真に下手なのだ。

ウンスンカルタ模写
ウンスンカルタ

なるべく忠実に描いてみたが、どう描いても、あの下手さは十分に伝えきれない。

私の絵も下手だが、本物はもっと下手だ。真似ようとしてもなかなか本物に及ばないのが絵ってものかと思うが、どうやっても本物よりうまく描けてしまう絵は、ウンスンカルタぐらいだろう。当時もう少しちゃんと描く人材も機会もあっただろうから、きっともっといい絵の札もあったはずなのだ。それなのに残ったのは、これだった。歴史の妙を感じずにはいられない。

だが、ここの展示で一番興味深かったのは、ウンスンカルタではなく、スゴロクだった。

いかにも子供向けっぽい西洋画で女の子とガチョウが描かれているもので、コマもガチョウである。女こどものいなかった出島だから、オランダ人と遊女が遊んだのだろうが、女相手とはいえ大柄で毛むくじゃらなオランダ人船員がこんなものをやっていたなんて、違和感満点だ。

スゴロク模写
スゴロク

スゴロクの中身が、一回休みだの、スタートにもどるだの、まるで現代と同じなことにも驚く。

「いやあ、出島の時代にもこんなものがあったんですね」

と感心していると、テレメンテイコ女史が学芸員に確認し、

「これは現在ヨーロッパで売ってるスゴロクだそうです」と教えてくれた。

「それがなんでここにあるんですか!」

「西洋にもスゴロクがあるという例として展示しているそうです」

おうおう、なんじゃそら、オランダ人船員と関係ないではないか! ふざけてはいけないのである。

しかしまあ、ちょっと安心したのも事実だ。

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「日本全国もっと津々うりゃうりゃ」宮田珠己
第1回 長崎──1. 出島とヒマ

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