中学受験の算数は方程式が使えない中で工夫して解くことを想定して作られているため、独特な問題が多いです。
中でも難関校の算数問題は、複雑を極め、何も準備しないままでは全く歯が立ちません。
入試の過去問や、専用の問題集でしっかり対策をしておく必要があります。
それでは難関中学校を受験するためには、算数においてはどんな問題集を解けばよいかご紹介します。
算数 プラスワン問題集(東京出版)
「中学への算数」でおなじみの望月俊昭先生による本です。
各分野しっかり単元別に分けられ、1ページ8問構成なので見やすいつくりになっています。
問題的には基礎ではありませんが、受験に向けての実力の下地になるような典型的な問題や、考え方を試すものが多く含まれていて、力をつけさせてくれる1冊です。
6年生の夏前ぐらいまでは授業の内容に加えてプラスワン問題集で基礎力を試すとよいでしょう。
図形やダイヤグラムなどで、知らなければ思いつかない考え方など多く問われますので、成績が優秀な生徒でもあっさりと解けない問題もあります。
解答解説が丁寧ですので自主学習はしやすいほうだと思います。
プラスワン問題集を使っていて不便に感じるのは20年前の本なので使い古された古典的な問題があることです。
今見るとわざわざ練習問題で出題するほどでは…というものもありますね。
それから問題ごとにテーマが明確に設定して出題されているため、一問一答のように決まった考え方をたどることになり、故に思考力を鍛えるのには向かないかなと思います。
教える側としては生徒の力量を測るのにちょうどよいので重宝していますが。
プラスワン問題集は表紙に「がんばる小学5・6年生用」と書かれている通り、一定以上の成績の優秀な生徒でないとほとんど解けず、取り組む効果は低いです。
5年生の段階で多く解けるようですと、相当実力があると言っていいでしょう。
中学への算数(東京出版)
言わずと知れた、主に難関中学校志望者を対象とする月刊誌の「中学への算数(通称:中数)」です。
毎日解く問題として設定された「日々の演習」は、入試や算数オリンピックから出題されていますが、とても難しいです。
難易度がA、B、C(Cが難)とありますが余程の難関校を志望でない限りA、Bの問題が解ければ上出来です。
一般の目にはただひたすらに難しいため、中学への算数を購読している層は塾の問題だけでは飽き足りない算数好きが多いと思われます。
難関校クラスの宿題は生徒にとっては大変ですからね。
中学への算数に手をつけるということはそれだけ余裕があるということでしょう。
中学への算数では、算数の問題以外にも科学の話や学校紹介などためになる記事が多数掲載されています。
算数の問題よりそっちのほうを楽しみにしている購読者もいるのではないでしょうか。
私は個人的に、中学への算数は受験生や家庭向けというよりも、塾の先生向けのカンペ的な存在だろうと思っています。
塾の教科書には書かれていない裏技的な解法やテクニックが紹介されていますからね。
バックナンバー数年分に書かれていることを一通り吸収できたら、それなりの指導はできると思います。
解答・解説も最適かつ、わかりやすい文章で書かれていますから教える側としては非常に参考になります。
王者の算数(ユーデック・がくあん編集部)
「王者の算数 難関中学突破への究極の"未来問"」というタイトルが示す通り、難易度は激高です。
そして、ただの難問を集めただけの問題集ではなく、各問がこれまでみたことのないようなオリジナリティを備えています。
この問題集に取り組むには基本は完璧に使いこなせた上で、難問に対する処理能力と未知の問題を解決する思考力が必要です。
最初の計算問題のページからただならぬ問題が並んでいますので、解くにはそれなりの覚悟が必要です。
王者の算数で取り上げられている問題は、灘中を一番意識していると思います。
問題の複雑さ、要求されるスピードがおそらく灘中を意識して設定しているだろうと考えられます。
王者の算数の問題は一問10分以内で解ければ灘中の問題にも対応できるといったところでしょうか。
問題的にはひねりがなく、素直な良問が多いのであくまで実戦に対する試合的な位置づけでですが。
灘中は時に予想のつかない問題を出題してきますからね。
2019年は高校生が合同式で解くような問題を出していますし。
王者の算数は過去に出題された難問を改変した問題集ではなく、未来問という言葉が示す通り将来的に出題される問題を想定しているようです。
私は最近だけでもこの王者の算数に載っていたタイプの入試問題をいくつか見てきました。
難関校で出題されやすそうな問題はしっかり押さえてありますね。
ただ、最近の難関校の問題は類題で練習しようがないくらい難しいものもありますので、王者の算数の問題を全部解いたからといって安心はできません。
入試問題の変化の波が近年は激しいですからね。
とは言え、市販の問題集の中では間違いなく最難問であるため、受験生としての総仕上げのために取り組む価値はあります。
問題数は少ないですが、解答解説のほうがメインかと思うくらい詳細でボリュームがあります。
一度解いてみて満足するのではなく、何度もやり直すことが大切です。
王者の算数の内容を全て吸収できれば、あらゆる中学校の入試問題に太刀打ちできるようになっていることでしょう。