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「父系図」坪内祐三

第三回
原日本人の血族

写真協力/杉山満丸・玄洋社記念館

杉山茂丸

・杉山 茂丸

(すぎやま しげまる)

政財界フィクサー

夢野久作

・夢野 久作

(ゆめの きゅうさく)

作家

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夢野久作が構想・執筆に十年を費やし、昭和10年に松柏館書店より刊行した小説。常軌を逸した作風から、一大奇書と評されている。

杉山茂丸 (すぎやま・しげまる)

政財界フィクサー

杉山茂丸 (すぎやま・しげまる)

夢野久作 (ゆめの・きゅうさく)

作家

夢野久作 (ゆめの・きゅうさく)

連載第三回目の今回は杉山茂丸 (すぎやましげまる)夢野久作 (ゆめのきゅうさく)の親子で行く。

この親子はいつか登場させたいとは思っていたけれど、まだずっと先のつもりでいた。

なぜなら、それぞれにスケールの大きなこの親子のことを四百字二十五枚にまとめて描くことは、とてもむずしいから。

もちろん連載第一回の淡島椿岳・寒月、第二回の内田魯庵・巌の親子もスケールが大きい。

しかし杉山茂丸、夢野久作親子の場合はそのスケールそのものが、彼らとまたちょっと違うのだ。

どこか日本人離れしている。

というよりも、古日本人(原日本人)のような感じがする。

淡島親子や内田親子の場合は近代と前近代の二元論で語ることが可能だ。

例えば淡島椿岳は前近代で寒月は前近代と近代のハイブリッドで、魯庵も同様のハイブリッドで、巌は近代人の感じがする。

ところが杉山茂丸と夢野久作はずっとそれ以前の古日本性を感じさせるのだ。

夢野久作が本格的に再評価されるようになったのは一九六〇年代後半、つまり日本の近代化に対して左右から批判的な眼差しが高まっていった時期だ。

そのような時に、土着的なものへの見直しの動きがあった。

夢野久作もそのような土着性とイコールでとらえられることもあった。

しかし夢野久作はその種の単純な土着ではない。

それは彼の父親である、つまり彼の先にある杉山茂丸の像を見ても明らかだ。

私はいわゆる幻想文学好きでなかったから、夢野久作の名前やその主著である『ドグラ・マグラ』の名前はもちろん知っていたものの、実際にその作品を通読したのは遅かった。

『ドグラ・マグラ』

夢野久作が構想・執筆に十年を費やし、昭和10年に松柏館書店より刊行した小説。常軌を逸した作風から、一大奇書と評されている。

『ドグラ・マグラ』

社会思想社の教養文庫で『ドグラ・マグラ』をはじめとする夢野久作の作品集を三、四冊入手していたが、 () (どく)されたままだった。

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