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第11回:荒木飛呂彦先生の原画展の思い出inフィレンツェ①
(フィレンツェにあったぜ! カツアゲロード!)


花の都フィレンツェ。

海と石造りの建物だらけのヴェネチアからやってくると、自動車を久々に目にしたこともあって、都会から田舎にやって来た時の衝撃と感動が胸に立ち込めてきた。観光地としてヴェネチアは素晴らしい土地だったが、生活している人の熱意が観光客にしか向けられていないような印象を抱いてしまったことや、人の住んでいない区間や廃墟が多かったせいか、街そのものに対して作り物めいた印象を持っていたのだが、フィレンツェではどこを見渡しても生活感があふれていて、普通に暮らしていて、観光客には目もくれないイタリアンが多くいることが嬉しかった。

今回のイタリアに来たきっかけとなった荒木飛呂彦先生の原画展。

荒木先生の代表作であるジョジョを最初に読んだのは近所の歯医者に置いてあった第2部からで、柱の男の存在が怖かったなあ……どうやって倒すんだろうと歯科治療中ずっと気になってしまっていたことや、第5部のシーンを思い浮かべながら、スーツケースをガラガラと引きずりながら歩くうちに宿についた。

途中、ジョジョのTシャツを着ている日本人らしき人を見かけたのだが、日も暮れかかっていたことと、急に外国で「君? ジョジョファンなの?」と声をかけられたら不気味だろうなと思ったので、特に何もせずチェックインを済ませることに決めた。

宿はそれほど値段の高い所を選んだわけではなかったのだが、フィレンツェの名所ドゥオーモの目の前に建っており、ヴェネチアの宿のように気合いを入れなければ開かないドアやどことなく塩っぽいと感じる水とお湯が交互にちょろちょろと出るシャワーなんて物もなく、日本のホテルと比べても清潔で、ネットも快適に繋がり、鍵も一度回せばカチャリと閉まる素敵で素晴らしい宿だった。


翌日、空は青く高く晴れ、空気も澄んでいて気持ちよかったこともあり原画展の会場に行く前に近くを軽く見て回ることにした。

市場でモツを挟んだサンドウィッチで朝食を済ますと、警察官と偽ブランドバックをかついで逃げ惑う人々がいたので眺めていたのだが、警察官も本気で追っているわけでじゃないのか、顔に微笑みを浮かべていた。トムとジェリー的な鬼ごっこだったのかも知れない。

モツサンド
モツサンド

モツサンドを購入した市場
モツサンドを購入した市場

しばらく歩くと、町のあちこちで絵が広げたまま売られている様子を目にした。

地面に置かれた絵
地面に置かれた絵

芸術で知られるフィレンツェの地だからと思ったのだが、どれも印刷された絵でわざわざ旅先で買うような代物にはとても見えなかった。それでも観光客が時々立ち止まり、値段を聞いている姿を見かけたので、ああいうのは幾らくらいするのかと思いきや、売り手はなぜか考え込んだ様子でなかなか値段をいわず、顎に手をやったポーズで散々勿体ぶってからパッと片手の指全てを広げて見せていた。観光客が「5ユーロか?」と聞くと2枚で「50ユーロ」だという。

「高い!」と言って値段を聞いた観光客はその場を後にした。

あんな値段で買う人がいるのだろうかと不思議に思っていたのだが、そこら中に絵を広げて売っている人は大勢おり、何故か細い路地や人通りの多いところには顕著に多かった。

その理由が判明したのは、とある観光客と見られる男性がうっかり絵を踏んで足跡をつけてしまってからだった。

「なんってこった!! 売り物の絵に靴の跡がついてしまった!!」

突然周りで絵を売っていた人物が集まりはじめ、絵を踏んだ観光客を取り囲み英語とおそらくイタリア語で「見ていたぞ」と連呼をはじめた。

観光客の男はしぶしぶ、自分の足形のついた絵を買い取り(値段は見ていなかったので不明)すごすごとその場を後にしていった。

絵を売る男たちは、写真を撮るためにカメラを手に後ろに下がる観光客の足元にも見事な手つきでさっと絵を滑り込ませ踏ませ、そして買わせてしまった。

ああいうタイプの詐欺というか、脅迫商売なのかとあきれながら、自分もうっかり絵を踏んでしまわないように足元ばかりを見て歩き、人通りのいない裏路地についた。

足元にご用心!
足元にご用心!

踏むと大変だ
踏むと大変だ

『ジョジョの奇妙な冒険』の第8部『ジョジョリオン』の舞台はイタリアでなく、仙台市がモデルとされる杜王町もりおうちょうなのだが、その中で「カツアゲロード」のエピソードがある。そこを通ると必ずカツアゲされるという有名な通りがあり、主人公達がうっかりと物を踏んづけて壊してしまったりして、弁償を要求されるという内容なのだが、荒木先生はこの絵を使ったカツアゲを知っていて、もしかしたら話を作り上げたのではないか。


洗濯物が下がる裏通りを進むと、Gucciの小さなサインと鮮やかな目の覚めるようなピンクの立て看板が目に入った。

ピンクの看板が目印<
ピンクの看板が目印

ここがフィレンツェの原画展の会場かと大まかな場所を頭に叩き込むと、また絵を踏まないように同じ道を戻り、宿で夕方のレセプション・パーティーまで休むことにした。


イタリアでは道を歩く時も気が抜けないのだ。

原画展会場近くにあった教会、あえて未完成の状態だそうです
原画展会場近くにあった教会、あえて未完成の状態だそうです

※ 荒木飛呂彦先生の原画展「HIROHIKO ARAKI AN EXCLUSIVE MANGA EXHIBITION IN FLORENCE」は、2013年6月28日~7月14日まで、フィレンツェにあるGucciの ショールームで開催されたものです。

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