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さらに次に見た清泉寺跡磨崖仁王像も、こうだ。

仁王は一般にお寺の入口で邪気の侵入を防ぐ大切な存在である。にもかかわらず、みんなみんなこんなざっくりとした造りでいいのだろうか。

私が思うにこれは石のせいである。

われわれがよく知る仁王は、たとえば東大寺山門の仁王像などもそうだが、木の像が多い。木は細かく彫れるものだ。それに対して石は性質上どうしても細かい造りが難しい。たとえば木であれば指を1本1本リアルに彫れるが、石では細いとポキッと折れてしまう。

私は以前、大分の国東(くにさき)半島で、同じように石造りで露天にむき出しになった仁王像をたくさん見たことがあるが、やはり造りは大雑把だった。

大雑把な仁王。

なぜ木像にせず、わざわざ石の仁王にしたのか。

理由は私にはよくわからないし、そのせいで、本来厳かであるべき神聖な空間がグダグダになってしまっているので、その点高く評価したい。

作り手の意図しないユーモアが溢れ出ているところが素晴らしい。

がんばったけど、こんなふうになってしまったという巧まざる造形の妙。まあだいたいこんなんでいいんじゃない、というなげやり感。そういった素人臭さ、庶民的な味わいがナイスだ。

鹿児島にこんな仁王があるとは、まったく知らなかった。

テレメンテイコ女史が“宮田が好きそう”と言ったのは、そういうことであった。面白そうだからもっと探してみることにする。

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「日本全国津々うりゃうりゃ〈休暇強奪編〉」宮田珠己
第19回 鹿児島1

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