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第18回「四国横断4」


4.天空の村と仁淀ブルー、そして佐田岬半島はどんな感じか


さて、われわれは引き続き西へ向かわなければならない。

なぜ西に向かわなければならないのか理由は定かでないが、今回の旅のミッションは、穴禅定(あなぜんじょう)とモノレール以外に、四国内奥にある天空の村と仁淀(によど)川の渓谷を見つつ四国を横断することである。内容に脈絡はないが、四国を横断しつつ、行きたい場所に全部行こうという計画なのだった。

天空の村というのは、文字通り標高の高い場所にある下界と隔絶したような村で、山がちな日本にはあちこちに存在するが、徳島の三好市にある落合集落は急斜面に家と畑がはりつく眺めが絶景というので見てみたかった。

モノレールのあと、集落と谷を挟んで反対側にある展望所に寄って、山の斜面をひとつごっそり削って村にしたような、ふしぎな景色を眺めた。

この落合集落は平家の隠れ里だったという伝説もあるようで、歴史はかなり古いらしい。車もなかった昔は上がったり下りたりするのが大変だったろう。だからこそ隠れるのに好都合だったのかもしれないが、実際に車で上がってみれば遠目に見るよりずっと急な斜面で、平家の落人もご苦労さまなことであった。

「これは上のほうに住んでいる人と、下のほうに住んでる人はどっちが偉かったんでしょうかね。名主とかどの高さに住んでたのかな」

「ふつうは上かなって思いますが。日当たりもいいし」

そうすると上ったり下りたりは大変だから、偉いやつは自分は動かないで、お前ちょっと下行ってタバコ買ってこいとか言ってたのだろうか。こんな斜面での暮らしは、いったいどんなふうか想像がつかない。

東祖谷歴史民俗資料館に立ち寄ると、屋島(やしま)の戦いで敗れた安徳(あんとく)天皇と平国盛(たいらのくにもり)がここに逃れてきたという説が紹介されていた。壇ノ浦に沈んだと思われていた安徳天皇は実はここに逃れてきていたそうだ。

「さすがに安徳天皇は、上がったり下りたりしなかったでしょうね」

見た感じではモノレールは見えなかったが、安徳天皇には特別に専用のモノレールがあったらよかったと思う。

モノレールに乗る安徳天皇
モノレールに乗る安徳天皇

安徳天皇は残念ながら8才で亡くなってしまい、お付きの国盛は平家再興の夢を失って悲嘆のあまりアル中になったそうだ。アル中でこの斜面はきつかったろう。

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