ホーム 『日本全国津々うりゃうりゃ〈休暇強奪編〉』宮田珠己 第16回 四国横断2 Page 3

それにしたって思うのは、よくもこんな洞窟見つけたな、ということである。

最初に入った人はものすごい勇気の持ち主にちがいない。こんなに狭くてどこに通じているかもわからない穴によくぞ入れたものだ。

われわれはすでに先人が何度も入って案内人までいるから安心だけれども、最初は中にどんな深い穴が落ち込んでいるかもわからなかったわけで、修行とはいえ、わざわざ中に入った人間の気がしれない。探検心がうずいたのか、それとも頭がどうかしていたのか。

さらに驚くのは、洞窟内の地面にずっと細い丸太が敷かれていたことだ。通りやすいように誰かが整備したのだろう。こんな狭い場所でよく作ったものである。狭いところは幅にして30センチぐらいだろう。

「この洞窟は誰かが掘ったんですか?」

「いいえ、天然です。2億5000万年前にできたそうです。はい、ここでバンザイ。腰落として、体岩に押し付けて、違う、左手ここ!」

「はい。あ痛たたたた……」

腰をやらないようになるべくひねらないでいきたいのだが、どうしても何か所ひねらずには通れないところがあった。

整形外科で薬をもらっていなかったらそこでアウトだったろう。

私はうっすら閉所恐怖症を自覚しているが、このときは腰のことが気になってそれどころではなかった。おかしな話で、むしろ腰対穴の戦いというアドベンチャー感みたいなものがあって、アトラクションとして面白いような気もしはじめていた。

時計がないからどのぐらいの時間進んだかはわからない。感覚的には50メートルぐらい入った気がするが、案外距離は短いのかもしれない。なにしろ1メートル進むのに1分かかるようなところもあるから。

最後にぽっかりと広い8畳間ぐらいの空洞に出て、そこが終点であった。

おお、着いた。やればできるではないか。

天井は10メートルぐらいあるだろうか。正面に弘法大師像があるそうだがよく見えない。本当の仏像なのか鍾乳石を見立てているのかもよくわからない。とにかくその像の前に燭台があって、そこにひとり1本ずつろうそくを立て、火を灯して、願いごとを唱え、般若心経(はんにゃしんきょう)を全員で詠む。といっても3人しかいないから、主におばさんが詠む。

前のページ

次のページ

「日本全国津々うりゃうりゃ〈休暇強奪編〉」宮田珠己
第16回 四国横断2

目次  1   2   3  4