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2.おそるべき穴


穴禅定。

それは四国霊場番外札所3番慈眼寺で行なわれる、国内では他に例を見ない厳しい修行である。

非常に狭い鍾乳洞の、往復1時間だか1時間半だかかかる行程を通りぬけなければならない。まともに歩いて進める洞窟ではなく、体をひねったり這いつくばったりしながら進むのだ。ぎっくり腰ではとても不可能な修行だった。

そもそも腰がどうこういう以前に、私は狭い場所があまり好きではなかった。腰が痛くなる前から、なんとなく気乗りがしなかったのである。

それなのになぜ行くと決めたかというと、そんな珍しい場所なら見てみたいというちょっとした好奇心と、穴禅定を体験せずして鍾乳洞は語れないという義務感のようなものが働いたのだった。なぜ鍾乳洞を語らないといけないのか、今思うと自分の考えが理解不能である。

さらにもうひとつ気になることがあった。

出発前に熊本で大地震が起こり、その震源が中央構造線沿いに東に移動していくのではという噂がネット上で広まっていたのだ。まさに今回の旅は四国横断つまりおおむね中央構造線沿いにこちらから九州に近づいていくコースだった。慈眼寺も、少しずれてはいるが、ほぼその線上にあると言えなくもない。鍾乳洞の中に入った途端、地震で穴が塞がるということはないのか。その点も心配であった。

ここにきて腰痛、閉所恐怖、地震という3つの不安要素が重なりあい、私はすっかりやる気を失っていた。

だが一方で、ここまで来て引き返すのもしゃくだった。とりあえず腰だけは何とかしようと徳島駅前のホテルにたどりついた翌日、つまり穴禅定当日、テレメンテイコ女史との待ち合わせの前に整形外科に診てもらうことにした。

医者は私の腰のレントゲンを撮り、軟骨が少し薄くなっているが心配するほどではないと言い、痛み止めと湿布をくれた。私はとりあえず痛み止めを飲み、湿布を貼って、テレメンテイコ女史とともに、やっとの思いで慈眼寺へ向かったのである。(つづく)

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第15回 四国横断1・2

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