ホーム 『日本全国津々うりゃうりゃ〈休暇強奪編〉』宮田珠己 第15回 四国横断1・2 Page 2

ここでぎっくり腰になるわけにはいかなかった。なにしろ旅はまだはじまってもいないのだ。

おまけに、最初に訪れるスポットで、ぎっくり腰では絶対に対処できないミッションが待っているのだった。

その名は、穴禅定(あなぜんじょう)。

四国霊場番外札所のひとつ慈眼寺(じげんじ)にある鍾乳洞を往復する修行で、めちゃめちゃ狭い洞窟のなかを、体をひねったり這いつくばったりしながら往復1時間以上も進まないといけない。太った人は最初からお断りというシビアな条件もさることながら、穴を通り抜けるために相当アクロバティックな体勢が求められるという本格的な修行の場だ。ただ見物するだけの観光とはわけが違う。

穴禅定イメージ図
穴禅定イメージ図

計画を立てたときは腰はピンピンしていて、まさかこんな状態になるとは思いも寄らなかった。まさかそれが直前になってこんな痛みに襲われるとは。

さっさと今夜の宿にチェックインして横になりたい。それ以外にこの危機をやり過ごす術はない。

それなのに、強風により運転見合わせ。

瀬戸大橋だから振り替え輸送というわけにもいかなかった。船にしたってバスにしたって運転を見合わせているだろう。

どうにも進めないと思うと、その進めないという精神的な窮屈さがさらに体を固くするようだった。それがますますぎっくり腰へのプレシャーを高めた。

とにかくじっとしていてはだめだ。私は瀬戸大橋手前の児島(こじま)駅まで行って風待ちするという列車に飛び乗った。常に前進し続けていないと、世界の終わりに飲み込まれてしまいそうだった。

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第15回 四国横断1・2

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