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第18回「宮崎2・3」


2.手漕ぎボートの聖地(つづき)


水はまずまずの透明度があり、泳ぐ魚が見えた。

川の両岸は、岩が柱のようにそそり立って、まるで人工物かと見紛う絶壁が続いている。途中、水の中には階段のようなものも見えた。

狭い回廊を進んでいくと、一瞬、両岸が後退し、やや広くなったトロ場に出た。水面に岩が露出し、ボートがぶつかりそうになったが、流れが緩やかなので危険はなかった。ボート乗り場はすっかり遠く、滝さえも視界から消えて、このへんまで来ると、誰もわれわれのボートをケアしてないのは明白だった。ここで沈没しても気づいてもらえまい。そう思うと、ますます探検気分が盛り上がってわくわくした。

川はさらに右へ折れ曲がって続いていた。あたりには、とくに引き返せという標識も見当たらないので、さらに奥へ進む。

貸しボートのレンタル時間は30分なので、計算上15分漕いだら引き返さなければならない。しかし、もし15分で最奥まで到達できない場合でも、延長して全容を解明するつもりだった。

右に曲がった先は、だんだん狭くなり、両岸もまた高く立ち上がってきた。

右手に雨がしのげそうな小さな洞窟があったので、わざと入ってみる。洞窟というより凹みといったところだが、そういうちょっとしたスポットは、せっかくだから、いちいち体験してから先へ進むのである。

上に橋が架かっているのが見える。小さなもので、それだけこの峡谷が狭いことを表していた。川はまだまだ続き、このへんまでくると、遭難しても発見されるのは死んでからだろうという気がした。このへんまで来ているボートは他にいなかった。

いったいこの先には何が待ち受けているのか。ディズニーランドのジャングルクルーズならば、このへんでゾウとか未開人とか謎の遺跡が出てくる頃だが、そういうものはまだ見えてこない。時はまさに漕ぎ始めてから15分が経とうとしていた。

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