ホーム 『日本全国津々うりゃうりゃ〈仕事逃亡編〉』宮田珠己 第17回 宮崎1・2 Page 4


2.手漕ぎボートの聖地


さて、倒れこむようにして朝6時に眠り、10時起床。

「よく眠れましたか」

「眠ったような気もしますし、眠ってないような気もします」

昨夜9時から12時まで寝ているので、計算上は計7時間寝たことになるが、そう都合よくテキパキ眠れるものでもなく、たぶんその半分も熟睡できていない。

そんな頭でレンタカーを借り、高千穂峡へ向かうことになった。

「でも昨日昼間休んでおいてよかったです。あれがなかったから、夜神楽は起きてられなかったです」

テレメンテイコ女史が言った。

いかに私の配慮が役立ったかを物語るコメントである。そこまで考えて私は午後便のバスに乗ったのだ。真相はそういうことなのだ。

今回の旅の最大の目的地である高千穂峡までは、すぐだった。山かげの、道路がくねくねと曲がった狭い場所に駐車場があり、観光客がうろついていた。最大の目的地にしては少々せせこましい。

駐車場の脇から下へ下りる仮設の階段があって、下りきったところがボート乗り場のようだ。周囲を見晴らせる場所がなかったので、渓谷の全体像が把握できないまま、われわれはボートに乗り込むことになった。

ボート乗り場は、幅にして50メートルほどの川の隅に設置してあり、上流には断崖に挟まれた谷が、門のように立ち塞がっていた。下流はやや広い瀬となって岩が露出し、ロープを張って行けないようにしてある。流れはゆるく、ボートに乗るにはちょうどいい環境だ。

鴨がたくさん浮かんでいて、ワーハッハと笑っていた。

「テレメンテイコさん! 鴨が笑ってます」

「啼いてるんですよ」

「笑ってるように聞こえます」

こんな啼き方の鴨は初めて会った。観光客がたくさん来て、エサをくれるから笑っているのだろうか。

前のページ

次のページ

「日本全国津々うりゃうりゃ〈仕事逃亡編〉」宮田珠己
第17回 宮崎1・2

目次  1   2   3   4  5   6