ホーム 『ラヴァーズ・ハイ』カニリカ 第2話『美しすぎる横顔』 Page 4

「ああ、いっけない……」

ジャーナリストの端くれである以上、疑問に思ったことや納得いかないことは、その場でどんどん質問してクリアにしてこなければならない。

だけど、あまりに未知の世界を見せられたせいか、突然、頭の中のパソコンが「理解不能」という信号を出し、質問すらろくに出来ない状況になってしまった。

ママ、映子、准、拓真の四人と朝まで会話が自然に続いたが、中身はほとんど最近の映画、音楽、ドラマ、芸能人のゴシップなど他愛ないことだった。陶子はその詳細まではよく覚えていないが、一度も帰りたいとは思わなかった。

それよりも准と拓真に対する興味と好奇心が先に立ち、ひたすら二人を交互に見つめて、相槌を打っていた 。

そうだ 、思い出した。途中で准がそんな陶子に気づき、ズバっと言ったのだ。

「陶子さん、鳩が豆鉄砲食らったような顔してますね。僕たちに聞きたいことがありすぎて、何を聞きたいのかわからないでしょ」

「え!」

「ほら、また豆鉄砲が当たった!」

そう言って、顔をクシャっとさせて笑った表情が何ともチャーミングだった 。

「彼は、結構頭がいいんだわ」

准の表情を思い出して、少し頬が緩んだのを見透かされたように、突然携帯が鳴った。

映子からのメールだ。

「陶子、きっと寝付けないんでしょ。当たり? 

あんな陶子、初めて見たわよ。ちょっと刺激が強すぎたかな。

でも、これからが本番!!

橋渡しはしたんだから、これからはガンガン通って、

あの店の常連になって、しっかり潜入取材してちょうだい。

面白い記事、期待してるわよ!!」

心をバッチリ見抜かれた映子のメールで、目が覚めた気がした。

「これは仕事なんだから」

そう言い聞かせ、陶子は早速仕事に取りかかろうと決め、パソコンのスイッチを入れた。

元々陶子は記事の下調べをネットで行うのはあまり好きではなかった。どこの誰が書いたのかわからない無責任な記事が多く、信憑性も薄い。必ず図書館に出向いたり、実際に取材したりして、ウラを取らなければならず、結局二度手間になる。

だが、今回の特集は「男を買う女たち」というネタがネタだけに、ネットのほうが圧倒的に情報は多い。映子とボーイズバーに行く前にざっと「ウリセン」や「出張ホスト」で検索をかけたら、膨大な数字がはじき出された。

「ウリセン」だけではざっと二十万件 、「出張ホスト」と検索ボックスに打てば、なんと一千万件 もヒットする。もちろんそれらすべてが風俗のページではないし、ウリセンの場合は当然ゲイ向けのページが多い。

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「ラヴァーズ・ハイ」カニリカ
第2話『美しすぎる横顔』

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