ホーム 『ラヴァーズ・ハイ』カニリカ 第1話『雨の匂い』 Page 3

フリーライターとしていくつかの雑誌やWEBに寄稿している陶子は、週刊誌「女性生活」の編集長である只野映子から特集記事の取材依頼を受けた。

映子は陶子の五つ年上だが、元々同じ出版社「女性の生活社」の先輩で、当時からよく可愛がってもらっていた。

同じ雑誌で働いたことはなかったけれど、陶子が体を壊して退職し、その後フリーランスで活動を始めた時に最初に仕事をくれたのも、映子だった。

その彼女が今注目しているのが、自分の欲求に貪欲なアラフォーの女性たち。

仕事も地位も財産も、人によっては結婚も手に入れた彼女たちが、レジャーとして若いボーイズと遊ぶのが秘かに流行っているという。

この実態を深く鋭く取材して欲しいというのが、映子が陶子に出した仕事の依頼だった。

「遊ぶ」と言えば、聞こえはいいが、この女性たちはボーイズの時間を買っているというのだ。

もちろん、その中には体を買うことも含まれる。

そう、一時代前のオヤジの遊び方を、今この「自立した」女性たちがいとも軽やかに享受しているという。

「すごい時代になったんですね」

陶子は話を聞いて、思わず漏らした。

「何言ってるの。あなただって、アラフォーなんだし。大して変わらないでしょ。女性は四十歳前後が一番性欲が高まるっていうじゃない」

「そうかもしれないけど、買うのまではちょっと……」

「それなら、セフレ探しますって?」

「そうじゃなくて……」

「ハハハ。陶子は相変わらず生真面目ねえ。そういうハケ口を知っているか、知らないかの差よ。自分の欲求に忠実なんでしょ、彼女たちは」

陶子の戸惑った表情を見て明るく笑い飛ばす編集長も、仲間の一人なの?

本当はそれをすぐに確かめたかったが、元々あけっぴろげな映子は、そのうち体験談を自分の方から話し出すだろう。

好奇心旺盛な映子が毎回目をつけるネタは、必ず自分でも実践して確かめる。

それが彼女のマスコミ人としてのポリシーでもあった。だから、いつも読者の共感を得るのだと。

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「ラヴァーズ・ハイ」カニリカ
第1話『雨の匂い』

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