ホーム 『大江戸怪談あやかし絵草子』外薗昌也 その二 鳥殺しの話 Page 2

いつの間にか日が傾き、暗くなった庭の中、老僧の影だけが不気味に伸びていく。

「な……なんでえ。何が言いてえんでえ?」

長い沈黙に耐えられず、茂吉が半泣きの裏返った声で老僧に問いかける。

と、老僧は茂吉につつと近づき、懐から紙の束を取り出し広げて見せた。

「その画帖がこれじゃ」

茂吉はぎょっとした。

広げた紙にはトリモチに捕らえられたうぐいすが描かれていた。

「くれぐれも、殺めぬようにな」

「鳥は恐ろしいからな」

「はああー」茂吉が画帖から、目を上げると……変わっていた。

老僧の顔が巨大な鳥の顔になっていた。

無感情な真っ黒い大きな瞳が茂吉を見据えていた。

「ひいいいっ!」

たまらず奥の土間に転がり逃げる茂吉。

    〈けけけけけけーーーッ〉

暗い庭から鳥の声が聴こえてきたまでは憶えていた。

「どうしたんだい。お前さん」

買出しから帰ってきた女房に声をかけられるまで、茂吉は土間の隅に突っ伏し気を失っていた。

「ぼ…坊主が……と…鳥に……! 大きな鳥に!」

腰が抜け訳の分からない事を口走る茂吉を女房が支えながら庭に出てみると。

黒い大きな羽根が一面に散らばり、作りかけのモチ竿はぐにゃりと折り曲げられ壊されていた。

羽根の長さは一尺三寸(約四十センチ)もあったという。


~神谷養勇軒「新著聞集」他

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「大江戸怪談あやかし絵草子 」外薗昌也
その二 鳥殺しの話

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