ホーム 『村上春樹2011』福田和也 第一回 『ダンス・ダンス・ダンス』 Page 5

「僕」についてのサーガ、四部作という指摘をしたけれども、『羊をめぐる冒険』から『ダンス・ダンス・ダンス』との間には、六年間のブランクがある。

一九七九年の『風の歌を聴け』、翌八〇年に『1973年のピンボール』、そして八二年に『羊をめぐる冒険』と立て続けに執筆されているけれど、『ダンス・ダンス・ダンス』は、一九八八年に執筆されている。

その六年の間に、『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』と『ノルウェイの森』が執筆されている。この二作、性格は異なるけれども強力な長編小説が二編書かれた後に、『ダンス・ダンス・ダンス』は、執筆された。この二作の成立が、『ダンス・ダンス・ダンス』にある程度の影響を与えているだろう事は、想像に難くない。

『ダンス』の現在、スタートは、一九八三年三月におかれている。

プラザ合意の二年前で、いわゆるバブル前夜。

上梓されたのは、八八年だから、景気の高揚期であり、ドルフィン・ホテルをめぐる地上げのエピソードなどが、一般的な説得力を持っていた。

資本の最適な投資を標榜したドルフィン・ホテル、五反田君の周辺の芸能界の人間たち--ベンツにロレックス--、テレビ・クルーを引き連れて、世界中を旅する行動派作家などに、当時の世相のエッセンスが、トーキング・ヘッズや、ボーイ・ジョージや、ヒューマン・リーグといった、広い意味でのニュー・ウェーブ・ミュージックが案配されている。

そんな道具立てのなかで、ピザ・チェーンである、シェーキーズは、どのような位置を占めるのか。

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「村上春樹2011」福田和也
第一回「ダンス・ダンス・ダンス」

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