ホーム 『日本全国津々うりゃうりゃ』宮田珠己 第一回 『名古屋(一)』 Page 2

悪いけれど名古屋はわたしにとって、現在住んでいる東京と関西の実家を往復する際に、新幹線の車窓から眺めるだけの通過都市に過ぎない。車窓からなら、もう100回ぐらい眺めただろう。あまりに何度も何度も通り過ぎたので、最近は名古屋もだいぶ擦れて色が剥げてきたように思う(ちなみに名古屋の色は、わたしのイメージでは、ピンクと黄色と銀色の組み合わせ。ためしに先のイラストをこの色で塗ってみて欲しい。わたしの名古屋感がビシビシ伝わってくるはずだ)。

どんな都市でも、たとえば札幌なら札幌、福岡なら福岡、広島なら広島、仙台なら仙台のイメージというものがあると思うが(仙台はちょっと薄い)、どういうわけか名古屋はかなり希薄である。観光しようと思っても、どこへ行けばいいのか見当がつかない。

ためしに思い浮かべてみると、名古屋城、名古屋港水族館、ナガシマスパーランドが浮かんだが、その後しばらくたって、そうだ明治村というのがあったと思いついたところで力尽きたのである。私は海の生き物を見るのが好きで、なおかつジェットコースターフリークなので、全国の水族館と遊園地にはわりと詳しい。だからそれを差し引くと、実質名古屋城と明治村しか思いつかなかったことになる。

さすがに何かあるだろうと、何年前だったか、帰省の途中で一度下車してみたことがある。

駅の観光案内所でどこか面白そうなところはないか調べ、そのときは徳川美術館に行って帰ってきた。徳川美術館は、美術館だった。

もっと何かあるだろう、ともう一度何かの機会に途中下車した。そのときは、津島天王社に行った。津島天王社は神社だった。

もう一度、今度は熱田神宮に行った。神社だった。

そうして私は、最終的にこう結論づけるに至った。

アディオス! 名古屋。もう来ることはないだろう。今後ますます通り過ぎると思うが、擦れて色落ちしても悪く思うな。

ところが、である。

意外なことに、名古屋は面白い、という人がある。名古屋が退屈だなんてありえないというのだ。それもひとりではない。じきじきに宮田さんは名古屋に行くべきです、と進言してくれた人もあった。名古屋が面白い? 意味わからん。

そういえば名古屋には得体の知れない食べ物が多いという話なら聞いたことがある。

味噌煮込みうどん、味噌カツ、小倉トースト、あんかけスパなど、日本のほかの地域ではとても食用とは思わないようなものを名古屋人は食べているという。しかし、食べ物が変わっているからといって行ってみようとは思わない。残念ながら、わたしは食べ物にあまり興味がないのだ。

そうじゃないんですよ宮田さん。名古屋には宮田さん好みの場所が、どっさりあるんですよ。

んああ? どういうことだ。

そこで、そんな人たちの話をひと通り聞いてまとめたところ、わたしのなかで名古屋のイメージはすっかり変わり、今ではこんな印象である。

名古屋イメージ

面白そうなので、行くことにする。

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