ホーム 『日本全国もっと津々うりゃうりゃ』宮田珠己 第3回 長崎──3. 軍艦島で滅亡気分 Page 2

やがて軍艦島が遠くに見えてきた。

が、見えてからも、なかなか近づいてこない。

おうおう、そんなところでじっとしてないで、お前がこっちに寄って来んかい。観光してほしいなら誠意を示せ、こっちはどんだけ揺れてると思っとんねん。と憤っていると、船長が、上陸前に全景を見るために島を一周してみましょうとか言い出し、なるほど全景は見てみたいが、島の裏側はますます波が高いとのことで、できれば軍艦島のほうでぐるっと回転してほしいと思ったのであった。

軍艦島
軍艦島

すでに自分の意志で進んでいるとは思えない感じの船だったが、島の北側に回ってみると、これまでのはほんの小手調べに過ぎなかったことがわかった。

岸壁にところどころ大きな波が当たって、どっぱーんと砕け、船は木の葉のように翻弄された。

もしかして台風?

そんな話は聞いてない。天気予報では、やや波があるとかなんとかその程度だった。それなのにこの揺れはいったいどういうことか。床がぐぐっと持ち上がったかと思うと、ひゅうううっと下がる。同時に船を打つ波の衝撃も伝わってきた。こんな海でそれなりに前に進んでいるほうがふしぎだ。

もうわやくちゃだから、カメラを軍艦島方向に向けると闇雲にシャッターを切り、構図とか写真の出来とかは、カメラに任せて撮影した。


しっかり注目できないけども、軍艦島は、波越しにチラチラ見た印象では、焼け跡のようだった。コンクリートの箪笥みたいな高層住宅が黒々と不気味に口を開けて、戦争でやられました、と言っている。実際は戦争とは関係なく廃墟になったわけだけど、そんな感じだった。

軍艦島アップ
軍艦島アップ

そうしてやっとの思いで島を一周し、桟橋に到着したときには、伝説の魔女の島にたどりついた勇者のような気分であった。

ああ、よかった。

これでやっと一息つけると思いきや、上陸したら今度はめっちゃ寒かった。かすかに雪が舞っており、風も強い。

思わず船に戻ろうかと思ったけど、陸から見る船は、としまえんのフライングカーペットみたいにぐらんぐらん揺れていたので、やっぱり寒いほうでいくことにする。

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