ホーム 『日本全国もっと津々うりゃうりゃ』宮田珠己 第2回 長崎──2. ランタンフェスティバルは、はりぼてが重要 Page 4

ステージで何か出し物をやっているようだったが、どうでもよかった。私はただただ光の洪水のなかに巻き込まれて、この世ならぬ世界へ連れて行かれる気分を味わいたかった。

ためしにそばにあった竜頭船のランタンに顔を近づけて、視野いっぱいをランタンで埋め尽くしてみると、ヘンな喜びが体を突き抜けていった。

竜頭船
竜頭船

おおおお。

このまま光の世界に、入り込んでしまえたらいいのに。

せめて自分の家にいっぱいランタンを持って帰って、部屋じゅうを飾り立て、光のなかに埋もれながら暮らしてみたい。あるいは布団のなかにランタンを詰め込んで、光る空間のなかで眠ってみたい。

ランタンはどっさりあったけれども、それでも私に言わせれば足りないぐらいだった。もとの町並みがまったく見えなくなるぐらい、空も地面も隠れるぐらいランタンで埋め尽くして欲しい。

「気に入ったランタンはありましたか」

「そうですね。竜宮門とかいいですね。あと熱帯魚も。テレメンテイコさんは?」

「気に入ったというか、気になるというか、あの太ったおっさんみたいなのが不気味です」

布袋?
布袋?

「不気味不気味って、ランタン嫌いなんですか」

「いえ、不気味だからいいんじゃないですか」

その後、テレメンテイコ女史と私は、公園を出て、ランタンに彩られた中華街を散策しながら、長崎名物のB級グルメを食べあさった。

角煮まんじゅうだの、エビをパンに挟んで揚げたハトシだの、歯ごたえのあるねじねじのお菓子、さらにトルコライスにも挑戦した。どれもとりたてて印象に残らなかったが、そうやって光のなかであれこれ食べ回ること自体にワクワクする。

ランタンは中華街だけでなく、唐人屋敷や、眼鏡橋方面、商店街のアーケードのなかにもあった。川沿いには金魚が並び、商店街には七福神、橋の上では餅をつくうさぎ、公園には恐竜や、カンフー少年、さらにネズミの嫁入りをモチーフにした巨大な塔まであった。

餅つくうさぎ
餅つくうさぎ

ネズミの嫁入り
ネズミの嫁入り

どれもこれも明るく楽しげで、素敵に不気味だった。テレメンテイコ女史の言うように、不気味の隠し味が効いて、かえってファンタジーが香るのだ。

前のページ

次のページ

「日本全国もっと津々うりゃうりゃ」宮田珠己
第2回 長崎──2. ランタンフェスティバルは、はりぼてが重要

目次  1   2   3   4   5