ホーム 『日本全国もっと津々うりゃうりゃ』宮田珠己 第1回 長崎──1. 出島とヒマ Page 2

市街地に到着しバスを降りると、歩行者用信号の少々気のぬけた点滅音が聞こえてきた。

パッポー、パッポー。

さらに、路面電車の、ブウーーーーン、カタッ、カタッ、コンコン、ブウーーーーという通行音。

パッポー、パッポー、ブウウウウー、コンコン。

まるでわれわれを出迎えるファンファーレのようだ。地方都市ならではの情景に、旅情は高まる一方である。

音にうながされるように、宿泊予定のビジネスホテルに到着。ホテルが中華街に近かったため、街路にはそこらじゅうにランタンがぶら下がっていた。

長崎は今日からランタンフェスティバルだ。中国の旧正月を祝う春節祭で、それがいつしか街じゅうランタンで飾られる一大観光イベントになった。われわれは、このランタンフェスティバルを見るためにやってきたのである。夜になれば、いっせいに灯がともり、それはそれは美しいにちがいない。


「実に感動的な長崎到着ではありませんか!」

テレメンテイコ女史にそう声をかけようと思ったら、ふりむくと女史の顔に「べつにふつう」と書いてあった。


ランタンフェスティバルのことは、2、3年前に駅貼りのポスターで知った。

派手なランタンに彩られた街の写真が、私の観光旅行者魂を揺さぶった。最近大々的にPRしはじめた祭りだけれども、そんないかにも客寄せを狙ったようなイベントに行ってもしょうがない、とは考えない。客寄せ狙いでも、ピカピカ光る祭りがあるなら行ってみたい。

祭りに限らず、夜の遊園地とか、クリスマスのイルミネーションとか、最近増えている電飾で飾りつけた家なども、近所にあればつい見に行ってしまう。

私は電飾好きなのだった。

ああいうのは女性やこどものためのもので、いい年こいたおっさんが喜ぶのはどうかという意見もあろうが、東南アジアへ行くと、仏像だってピカピカ光っている。タイでもミャンマーでも、仏像のまわりに電球を飾り付けて、夜どおし光らせていた。

仏像と私とどっちがいい年こいてるであろうか。当然、仏像だ。何歳か知らんが、私より上だろう。仏像がオッケーなんだから、私が光るイルミネーションに誘われたからといって、文句を言われる筋合いはないのである。

光る祭りといえば、もっとも印象に残っているのが青森のねぶただ。

あれは最高だった。めちゃめちゃ光っていた。思わず、ねぶたの上に乗っかって、そのまま、ラッセー、ラッセー、と光の国に失踪しようかと思ったぐらいだ。

山口県の柳井という町には、金魚ちょうちん祭りというのがあって、毎年お盆になると町が金魚のランタンに占拠されるというから、いずれそれにも行ってみたい。

長崎のランタンフェスティバルは、どうだろう。

大掛かりなうえ、異国情緒も加わって、どう転んでも面白そうである。

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「日本全国もっと津々うりゃうりゃ」宮田珠己
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